教会とは違い礼拝堂であり礼拝堂は聖人の名前などで呼ばれるのが一般的ではあるが、この建物は地名であるロンシャンの名で呼ばれている。
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(正式名称はシャペル・ノートルダム・ディオー礼拝堂)
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さらに、雪を踏みしめながら近づいていくと、そこは礼拝堂とは思えない奇妙で巨大な建物が出現した。
うねった曲線の異様な質感がある屋根が宙(そら)に向かって突き出している。
これまでのサヴォア邸に見られる、コルビュジェの作品とはあきらかに違っていた。1927年に彼が示した、近代建築の5原則である1、ピロティ2、屋上庭園 3、自由な設計4、自由なファサード5、横長の連続窓 このどれにも該当しない。直線と直角で構成せれてもおらず、大きな窓も無い。 |
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モデュロールにとらわれること無く、合理性と機能性を追及したものでもなかった。外観のほか平面的にも異様で斬新な設計は、これまでのモダニズムと違う設計手法によるものとして賛否両論あったと思われる。

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近くで見ると、不時着した宇宙船か何かのようにも感じられる外観に圧倒されながら、正面である南側から時計とは反対廻りに歩いていくと見る角度が少し変わるたびに、つぎつぎとその形態を変える。生きている建築がそこにあった。
屋根はロングアイランドの海岸で拾った、蟹の甲羅から発想したとも聞く。コンクリート打ち放しの屋根と白い壁が力強く、存在感をあらわしている。
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夏には、この芝の広場いっぱいに大勢の人々で埋め尽くされ、礼拝がおこなわれる。 北側にまわると北にも不規則な窓や階段があった。 この建物の出入り口も北側にあり、ここから内部に入ることができる。
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西には象か豚の鼻のような雨樋と塔屋状のものが突き出ており、象の鼻からは大屋根の雨水(あまみず)を集めて流しているのか雪が凍り垂れ下がっている。大雨が降る時には雨水(あまみず)が滝のように流れ落ち下の池に溜まる。
山の頂上であり昔、礼拝に訪れる人々にとって唯一飲料水を確保するためのものと思われる。
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これから、いよいよ礼拝堂の内部に入る。北面にある重厚な木製の扉を開けると、そこには前室があり、礼拝堂につながる扉をふたたび開けて、この建物の体内に進入した。
そこは外観と違い想像もしなかった驚きの空間があり、光と影の荘厳雰囲気を感じることができた。
言葉にできない感動を覚えふるえた。
南側にある無数の大小不規則な窓からはステンドガラスによるさまざまな色の光が神々しく、ふりそそぎ光の道を創る。 |
高いところにある、奥行きのある穴はそれぞれ角度がちがい、刻々と変化する太陽の光のうつりかわりを計算しつくし、正面中央の祭壇へと光を導く。ほかには唯一、ロウソクに灯されたあかりがあるだけだ。
祭壇の上部にある小さなガラス窓は内外からガラスが嵌込まれており、光につつまれたマリア像が微笑んでいて人々を神の世界にみちびいている。
下のほうの窓からは光がステンドガラスの絵を床に映りだしている。
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人々を沈黙させる雰囲気と美しさがあった。
内部の複雑な天井・壁、無数のうがった穴の形状によって音響的にもすぐれた設計がされており、ミサの日には人々の賛美歌を歌う声やピアノの音楽も、やさしく聞こえてきそうな雰囲気がある。自然の光と音を生かした祈りの空間が`そこにあった。この部屋の後ろの方には奇妙な空間があり、中央に聖書の置かれた祭壇がある。反対側にも同じような場所がもうひとつあり、上からやさしい光が降りてくる。外から見た搭屋状の窓から光がふりそそぎ、神に祈りをささげる。
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